Naka Time and Space

時間と空間に関連する諸々を書きます

屋久島の時間と空間

昨日の『ブラタモリ』は屋久島が舞台でした。屋久杉を中心に形成される特徴的な地形、植生、人々の暮らしが紹介されていました。

本ブログのテーマの時間と空間という観点では、長い年月を経て形成された屋久島の地質的な特徴、屋久島がなぜ長く生きるのかということ、空間としては一つの島でありながら多様性にあふれた植生を有していることが興味深かったです。

番組内容

大きく次の内容でした。

  • 屋久島の地質的成り立ちと植生
  • 屋久
  • 人々の暮らし

屋久島の地質的成り立ちと植生

屋久島は、フィリピン海プレートユーラシアプレートの境界に位置し、約1500万年前にこの境界でマグマが生成され、徐々に地中で冷やされ花崗岩となりました。のちにこの花崗岩は、最大で10000m隆起して屋久島ができたそうです。ですから、屋久島には1000m級の山が40もあり、島を構成するのはほとんどが花崗岩です。

また、南から吹いていくる暖かく湿った風は、屋久島の山にぶつかって上昇し、上空で冷やされ雨となって降り注ぎます。屋久島は雨雲の一大生産地です。

こうした屋久島の環境で育つ植物は非常に多様です。屋久島は亜熱帯に属していますが、1000mを超える山の上部の気温は北日本と同等だと言います。これにより、屋久島という単一の空間で九州から北海道までの植生を見ることができるそうです。

屋久

ほとんどが花崗岩によって構成される島で、どうやって立派な屋久杉が育つのかが次のテーマでした。

この秘密は上で触れた豊富な雨量にありました。雨がよく降り、湿った環境は苔にとっては絶好の生育環境です(屋久島には600種の苔が存在するとのことです)。さらに苔は岩の上でも育つことができ、水分の貯蓄機能も優れています。こうした苔の生えた岩を土壌として屋久杉が育っていきます。実際、番組内で出てきた屋久杉は苔の生えた岩を抱え込むような形で立っていました。ただ、それでもやはり岩なので十分な栄養があるとは言えず、そのことが逆に屋久杉をゆっくりと大きく成長させるのに寄与しているということでした。

また、屋久杉は倒れてもなかなか朽ちないのが特徴です。これは、風雨にさらされ傷つくことで屋久杉が多くの樹脂を出すことが関係していて、殺菌、防虫効果のある樹脂によって守られるのです。

こうした屋久杉は、木材として高い価値を見出され、さまざまな建築で用いられるようになります。

人々の暮らし

木材として高い価値をもつ屋久杉の存在は屋久島を林業で栄えさせていきます。

屋久杉は古くは、戦国時代に年貢として納められ、1900年代には屋久杉の森林は国有林となり国の事業として伐採が進められます。番組内では、当時屋久杉の運搬に用いられていたトロッコや線路、山を切り抜いて作られたトンネルが紹介されていました。また、そうした伐採事業の過程で、山の中に集落が形成され、山中の林業で生み出されたお金は山下に落とされ町を栄えさせることになりました。

今は、観光産業が主流となっており、今も昔も屋久杉があって人々の暮らしがあるという形で番組は結ばれていました。

感想

屋久島に関しては屋久杉のことくらいしか知らなかったため、非常に興味深く番組を視聴しました。屋久島の地質的な成り立ちという点も、今ある空間がどのように形成されてきたのか地質学的な視点から目を向ける契機となったため本ブログにとって有益でした。

1点これから考えていきたいなと思ったのは、人と自然の共生(というよりも自然の中で人間が生きること、でしょうか?)が美しいとされていることについてです。今回でいえば、プレートの境界でマグマができて、それが冷やされ花崗岩となり、隆起して屋久島ができ、暖かく湿った空気が山にぶつかり、雨が降り、岩に苔が生え、そのうえに屋久杉が育つ、という流れには「これぞ自然だな〜、すごい!」と感動しました。他方で人々の暮らしの話になると、今は観光で経済がまわっているそうですが、かつては屋久杉を伐採して売ることで富が生み出されており、上の自然のメカニズムとは異質なものであると感じました。

何を美しいと思うかは人それぞれで、どんなことにおいてもそれが本当に難しいなと思っているところです。上の屋久島における自然との共生に関しても、もしかすると肯定的でない人がいてもおかしくないなと感じました。それでも、人間も生物で基本的には生きることを欲しているので、さしあたりはsurviveの視点と、美的評価の視点は分けて考え、あまり特定の立場にコミットしすぎないように気をつけなければなと思いました。

屋久島についての情報

環境省のページにいろいろ載っています

www.env.go.jp