Naka Time and Space

時間と空間に関連する諸々を書きます

藍染めの中の時間

昨日NHKで放送されていた『趣味どきっ!染めものがたり』では藍染めが紹介されており、時間という観点から非常に興味深く視聴しました。

内容

場所は茨城県つくば市。今回の主人公である丹羽さんのご自宅からは筑波山がよく見えます。

丹羽さんは美大時代に織物や染色を学ばれ、とりわけ藍染めに魅了されたといいます。

受け継がれる藍甕

結婚を機につくばに引っ越した丹羽さんは、かつてその土地で使われていた藍甕を譲り受けます。ひびが入ったり欠けたりした部分はすべて自分で補修をしたそうです。その土地では、江戸時代から昭和にかけて藍染めが行われており、それが丹羽さんの手により時間を超えて受け継がれたことになります。

藍染めに込められた時間

番組の中では、丹羽さんの自宅の工房で藍染めの工程が紹介されました。

藍の原料はタデアイという植物で、葉の部分を乾燥、発酵させると青の色素を含んだ「すくも」が生まれます。このすくもに、木材の灰を水に溶かした際の上澄液と糖分を加えることで、すくもはさらに発酵します。この発酵で青の色素が水に溶け出し、染液の表面には「藍の華」と呼ばれる泡が浮かぶようになります。

染液の管理は五感を頼りに行われます。温度、見た目、匂いからその都度必要なものを見極めます。

実際に布を染めていく工程では、藍は空気に触れると色が変わり布に空気が残っているとムラになるため、素手で感覚を確かめながら空気を搾り出します。1、2回目の染色では、布の色は黄色や緑色ですが、回数を重ねることで深い青になっていきます。この状態の布を水にさらすとパッと鮮やかな青に変化します。番組ではこの様子が映されていました。

このように藍染にはかなりの時間がかかり、その積み重ねられた時間があの美しい青色を作っているのです。

感想

つくばの自然

まず、場所が茨城県つくば市というところが良かったです(エンディングの風景が素晴らしすぎました)。筑波山周辺の、「真っ平な田園風景の中にそびえる筑波山」という風景は自分もとても好きです。全くの自然ではなく、どこか人の匂いがする自然、温かさを感じる自然です(これについてはまた記事にする予定です)。

藍染

これまでは漠然と藍色ってきれいだなと思っていただけでしたが、そのプロセスがこれほど時間との関わりがあるものだとは知りませんでした。

動画を倍速で見るようには染色を早送りすることはできず、自然に流れる時間の中に身を置いて静かに藍と対話をする必要があるのだなと思いました。

今回の主人公の丹羽さんは、その生活のあり方からまさに「自然の時間の流れを生きる人」という感じがすごく伝わってきました。藍との生活は「精神が安らぐ」とおっしゃっていたことも印象的でした。初回の記事で述べた自分の時間観からすると非常に興味深かったです。

nakanttimespace.hatenablog.com

新たな時間の生き方を知ることができて有意義な番組でした。そして藍染めの物がしっかり欲しくなりました。

藍染めについて詳細に紹介されています

story.nakagawa-masashichi.jp

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