Naka Time and Space

時間と空間に関連する諸々を書きます

良く眠ることは難しい

先日の『クローズアップ現代』は睡眠特集でした。睡眠の重要性は、おそらくみんなが認識しているはずです。

人生の限られた時間のクオリティをどれだけ向上させられるかに睡眠は密接に関わっているので、本ブログとしても興味深い内容でした。

内容

実際に睡眠に悩みを抱えている一般の方の様子が映され、スタジオでは専門家を招き、最新の研究の成果を共有してもらうというものでした。

日本の睡眠事情

世界の50以上の国を対象に実施されたリサーチで、日本は平均睡眠時間が6時間18分で最下位だったそうです。睡眠が不足することによって生じる経済的損失の試算は18兆円にのぼるということで、睡眠はかなり大きな問題であることがわかります。

最近では、ソーシャルジェットラグという睡眠リズムの乱れによって生じるある種の時差ボケ状態も問題になっているそうです。動画配信サービスやSNSなど依存性の高いコンテンツが充実しているために、平日の時間がない夜中でもついつい見すぎてしまったり、ハイブリットワークによって出勤する日とそうでない日でばらつきが出てしまうことなどが主な理由としてあげられていました。

新たな睡眠の指標と死亡リスクの関わり

番組では、新たな睡眠指標である「睡眠休養感」が紹介されていました。これは、朝起きた際の主観的なスッキリ度を5段階で判定するというものです。この指標は、死亡リスクとかなりの関わりがあるということが研究で分かったそうです。

この指標とともに注視すべきポイントとして「床上時間」があります。床上時間は、端的にいえば「眠っていないけど寝床にいる時間」のことです。特に高齢者の方の場合にはこの床上時間の長さも死亡リスクと関わってくるとのことでした。

快適な睡眠のために

番組終盤では、こうした様々な睡眠の問題を抱える私たちに対するいくつかのTipsが紹介されました。

  • 夜は部屋の明かりを薄暗くする
  • 自分にとって快適な室温を保つ
  • 昼寝は14時までに20分以内
  • スマホは光とコンテンツの刺激によって脳覚醒させてしまうため使用しないほうが良い
  • 音楽はフェードアウトさせる
  • 酒はNG
  • サプリや飲料は自分に合ったものを摂取
  • お風呂は就寝1-2時間前
  • 夜中に途中で起きてしまったら腹式深呼吸

感想

分かってはいても…

睡眠が重要であること、良質な睡眠のために実践すべきことはいろんなところで言われているので、多くの人が正解にあたる情報をインプットできているのではないのかなと思います。とはいえ、「それは分かっているんだけど実践に移すとなると…」となるからこその現状なのだろうなという気がします。

番組の最初の例で登場したエンジニアの男性の方が言っていた、終業後も仕事のことが頭から離れない、というのは少なくない人が同様の状態になってしまいがちではないのでしょうか(自分も確かに仕事以外の時間に仕事のことを考えてしまうことがあるなあ、と)。そして、この脳のリソースが何らかの考え事や悩みに占拠されている状態では、先の睡眠のいろはを実践に移すことは難しいのではないかと思います。というのも、そうした状態では適切に処置をとらなければ反芻思考に陥りエネルギーが使われてしまうと思われるからです。

また、動画やSNSは依存性が高く、人間のモチベーションをハックするので一度アルゴリズムの流れにのってしまうと自分の意志で抜け出すことは困難になってしまいます。

それらを踏まえると、とりわけ現代は睡眠のいろはを実践する前に実践するための状態を作る必要があるということになるので、睡眠って本当に大変だなと感じます。

新たな睡眠指標が好きすぎる

番組で紹介されていた新たな睡眠指標である「睡眠休養感」ですが、個人的にかなり好きでした*1

今までいくつかの睡眠系のテクノロジーに手を出したことがあるのですが、主観的にはスッキリ起きれた!という時でも、デバイスが低クオリティの判定を出してきて萎える、みたいなことがあって、どうしたもんかいのと感じていました。そこにこの原点回帰のシンプルな指標で、しかもきちんと有効性が確認されたものだったので、本当にありがたいなと思いました。朝起きて感じたことがそのまま指標になるので、あれこれ考えなくていいのもとてもうれしいです(考えることが増えるというのは睡眠の敵なんですよね…)。

これからは、新たな指標である睡眠休養感とともに快適な睡眠ライフを送れるよう努めていきたいです。睡眠に関わる気づきなどがあればまた記事にしようと思います。

今回の内容をもっと知りたい方のために

番組内容のサマリー:

www.nhk.or.jp

番組にも出演されていた柳沢さんによる快眠術の紹介:

www.nhk.jp

睡眠休養感の研究概要:

www.ncnp.go.jp

*1:本筋からはだいぶ外れてしまいますが、コミカルな面白さを感じたというのがあります。スマートデバイスによって客観的に睡眠の質を測ることができるようになったり、アプリで睡眠を管理できるようになったり、最近はテクノロジーの発達で睡眠がより客観的に、正確に測定できる時代になった感をいろんなところで感じていました。そうした時代にあって、番組の宣伝の段階から「最新の研究から明らかになった新たな睡眠指標とは?」のような形で番組のメインディッシュとしてものすごい盛り上げの流れがあり、「一体どんなすごい指標が出てくるんだ?」となっていた中で出てきた指標が、「朝起きた時の主観的スッキリ度を5段階で評価する」というものでした。「ああついに1周まわったんだなー笑」と。このちょっとしたズッコケ感(実際にはズッコケどころか素晴らしい指標なのですが)が個人的にツボにはまってしまいました。