Naka Time and Space

時間と空間に関連する諸々を書きます

言葉の形作る空間

今回は、言葉と空間というテーマです。

先日NHKでやっていた『言葉にできない、そんな夜。』という番組の感想とあわせて普段言葉と空間について考えていることを綴っていきます。

言葉と空間

自身が外的・内的に発する言葉は独特の空間を形作る、というのが自分の考えです。それは、他者とのコミュニケーションや自分の思いとの関連においてです。

イメージとしては次のようなものを思い描いています。

この図でどういうことを考えているかというと、まず、自身の思いは言葉によって表現しきれるとは限りません。「何となくもやもやするなあ」というのがそんな状態の代表例です。さらに他者と会話をしている際にも、自分の言いたいことをを100%伝えられた!と思っても、半分しか伝わってなかった、みたいなこともよくあったりします。

何かを表現したいと感じたときに言葉だけでは足りないという状況が出てくるはずで、そうしたときに絵画や彫刻などの芸術が出てくるのかなと思います。

番組内容

各回いくつかのテーマが決まっているようです。番組の構成としては、テーマが提示され、テーマに関わる小説や歌詞の一節が引かれたり、スタジオの出演者がテーマに関する一句をよんだりするものでした。出演者は歌手やアイドル、作家などです。

お題は次の通りです。

  • 酒を飲んではしゃぎすぎたことを思い出した時
  • セットしたのに髪型がくずれた時
  • 大丈夫じゃないのに大丈夫と言ってしまった

番組の感想

言葉にできないことを何とか言葉にしようとする、という番組のテーマが非常に良かったです。ただ、出演者の中で作家の方が”先生”のような立ち位置で進行されていた点が気になったと言えば気になりました。もちろん作家の方は、言葉を他者と共有するプロフェッショナルではありますが、その他の方であってもそれぞれ自分独自の言葉の空間をもっているはずで、とりわけ本番組のテーマからすれば、それらが平等にリスペクトされるべきだと思ったからです。

言葉の空間のギャップのありがたみ

冒頭で示した言葉に関する空間の図式からすると「大丈夫じゃないのに大丈夫と言ってしまった」というテーマは興味深かったです。

これは、言葉による表現が相手への思いやりの気持ちに時間的に追いつかないケースですね。コミュニケーションの不一致、もやもやの例として挙げられていましたが、個人的には素敵なことだと思います。この「言ってしまった」は、相手を思いやってる気持ちが存在することを証明していて、言葉が字面の意味とは別の意味をもっていることになります。

冒頭で示した図式における表現したい思いや言葉によって形成される空間が異なることで生まれる意味は、ときに人間的な温かみの存在を教えてくれるのだなと思わされました。